今回から、行政作用法の中でも中心テーマになる行政行為を扱います。
行政行為とは、ざっくりいえば、行政が一方的に国民の権利や義務を動かす行為です。
ただし、試験でいきなり難しく感じるのは、「許可」「特許」「認可」という言葉が、日常の日本語とずれるからです。
たとえば、運転免許は名前だけ見ると特別な権利をもらったように見えます。しかし、行政法上の分類では、特許ではなく許可です。
逆に、農地転用の許可は、名前は許可なのに、性質としては特許的に整理されます。
今回は、この名前と性質のズレを見破れるように、行政行為の大きな分類から整理していきましょう。
行政行為の分類と見分け方①
コタロー
先生! 行政法の過去問を解いていたら、「自動車の運転免許は特許である」とか「農地転用の許可は認可である」とか、日本語として意味がわからない問題が出てきたよ。免許は免許だし、許可は許可じゃないの?
ワンブル先生
コタローくん、そこが行政行為の最初の山場だよ。日常用語の「許可」や「免許」と、行政法上の分類は、必ずしも一致しないんだ。大事なのは名前ではなく、その行為が何をしているのか。そこを見れば、ひっかけに強くなれるよ。
ここだけチェック
このページで押さえる軸は、次の3つです。
チェックリスト
- 法律行為的行政行為は、行政の意思で法律効果を発生させる
- 準法律行為的行政行為は、事実の判断・証明・通知などをする
- 許可は、本来の自由を回復させる
- 特許は、新たな権利や地位を与える
- 認可は、私人間の法律行為の効力を完成させる
行政行為の大きな分類
行政行為は、大きく分けると、法律行為的行政行為と準法律行為的行政行為に分かれます。
名前は少し硬いですが、見るべきポイントはシンプルです。
行政の意思で効果が発生するのか。
それとも、行政が事実を判断したり、証明したり、知らせたりするだけなのか。
法律行為的行政行為
法律行為的行政行為とは、行政庁が「こうしなさい」「これを認めます」と意思を示すことで、国民の権利や義務を動かすものです。
たとえば、営業を許可する、違法建築物の取り壊しを命じる、特定の人に特別な権利を与える、といった場面です。
ここでは、行政庁の意思が中心になります。
準法律行為的行政行為
準法律行為的行政行為とは、行政庁の意思で権利義務を作るというより、事実を判断したり、証明したり、通知したりする行為です。
法律効果は、行政庁の意思そのものではなく、法律の規定によって発生します。
代表例は、確認、公証、通知、受理です。
確認は、特定の事実や法律関係を判断して確定する行為です。当選人の決定や、所得税の更正などが例になります。
公証は、特定の事実の存在を公に証明する行為です。選挙人名簿への登録や、戸籍への記載をイメージするとわかりやすいでしょう。
通知は、特定の人に事実を知らせる行為です。納税の督促などがこれにあたります。
受理は、申請や届出などを有効なものとして受け付ける行為です。婚姻届の受理が代表例です。
コタロー
法律行為的行政行為は、行政の意思で動かすもの。準法律行為的行政行為は、事実を判断したり証明したりするものなんだね。
ワンブル先生
そうだね。発明の特許のように、名前に「特許」と入っていても、行政法上の分類では確認にあたるものがある。だから、ここでも名前ではなく性質を見るんだ。
命令的行為と形成的行為
ここからは、法律行為的行政行為の中身を見ていきます。
法律行為的行政行為は、大きく命令的行為と形成的行為に分けられます。
命令的行為は、国民が本来持っている自由を制限したり、その制限を解除したりする行為です。
形成的行為は、国民が本来持っていない新たな権利や地位を作り出す行為です。
命令的行為
命令的行為は、国民の自由や義務に働きかける行政行為です。
下命
下命とは、国民に対して「これをしなさい」と義務を課す行為です。
違法建築物の除却命令や、課税処分などをイメージするとよいでしょう。
禁止
禁止とは、国民に対して「これをしてはいけない」と不作為義務を課す行為です。
道路の通行禁止や、営業の停止命令などが例になります。
免除
免除とは、すでに課されていた義務を解く行為です。
納税の免除や、就学義務の免除が例として挙げられます。
許可
許可とは、一般的な禁止を解除し、本来の自由を回復させる行為です。
ここが最重要です。
許可は、特別な権利を新しく与えるものではありません。
本来は自由にできるはずのことについて、危険防止や秩序維持のために、いったん一般的に禁止しておく。そのうえで、条件を満たした人について禁止を解除する。
これが許可です。
自動車の運転免許や飲食店の営業許可は、典型的な許可として整理されます。
ワンブル先生
運転免許は「特別な身分をもらう」ものではなく、危険だから禁止されている運転について、条件を満たした人だけ禁止を解除してもらうものなんだ。
形成的行為
形成的行為は、新しい権利や地位を作ったり、私人間の法律行為を完成させたりする行政行為です。
ここでは、特許と認可が特に重要です。
特許
特許とは、特定の人に新たな権利や法的地位を与える行為です。
本来は誰でも自由にできるわけではないことについて、行政が特別に認めて、新しい権利や地位を作ります。
公有水面の埋立免許、帰化の許可、公営法人の設立認可などが例になります。
公有水面の埋立免許は、海などの公共的な場所を、特定の人に埋め立てて利用する特別な権利を与えるものです。
帰化の許可は、日本国籍という新たな法的地位を与えるものです。
公営法人の設立認可も、法人という新たな法的地位を作る点に注目します。
認可
認可とは、私人間の契約などに行政が補充的に関与し、その効力を完成させる行為です。
当事者同士の合意だけでは、まだ法律上の効力が完成しない。
そこに行政の認可が加わることで、効力が完成する。
このイメージで押さえるとわかりやすくなります。
農地の権利移転の許可や、公共料金の値上げ認可などが例になります。
代理
形成的行為には、代理もあります。
代理とは、行政が本来は当事者間で決めるべきことを、代わりに決める行為です。
土地収用の裁決では、公共事業のために土地を取得する際、補償金額などについて行政が裁決する場面が問題になります。
名前にだまされない見分け方
行政法の試験では、行為の名前と、行政法上の性質がずれるものがよく出ます。
ここでは、名前ではなく「何をしている行為なのか」で整理します。
自動車の運転免許・医師の免許
名前は免許なので、特別な権利をもらうように見えます。
しかし、性質は許可です。
運転や医業は、危険性があるため、いったん一般的に禁止されています。条件を満たした人について、その禁止を解除しているにすぎません。
そのため、本来の自由を回復させる許可として整理します。
農地の権利移転の許可
農地をAさんからBさんへ売る場合、農地法上の許可が必要になります。
名前は許可ですが、性質は認可です。
なぜなら、AさんとBさんの売買契約という私人間の法律行為について、行政が関与して効力を完成させるものだからです。
農地転用の許可
農地を宅地などに変える場合にも、農地法上の許可が必要になります。
こちらも名前は許可です。
しかし、農地の転用は、本来誰でも自由にできることを単に回復させるものではありません。
行政が特定の者に対して、農地を別の用途に使うことを新たに認める性質が強いため、特許的な性質を持つものとして整理されます。
帰化の許可
外国人が日本国籍を取得する帰化の許可は、特許です。
日本国籍という新たな法的地位を与える行為だからです。
公営法人の設立の認可
名前は認可ですが、性質は特許です。
法人という新たな法的地位を作る行為であり、私人間の契約を補充して完成させるものではないからです。
発明の特許
名前は特許ですが、行政法上の講学的分類では、準法律行為的行政行為の確認にあたります。
発明という事実が、法律上の要件を満たしているかを判断し、確定する行為だからです。
まとめ
行政行為の分類は、最初は名前が似ていて混乱しやすい分野です。
ただ、見分ける軸はそれほど多くありません。
まず、法律行為的行政行為と準法律行為的行政行為を分ける。
次に、法律行為的行政行為の中で、命令的行為と形成的行為を分ける。
最後に、特許・許可・認可を性質で見分ける。
この順番で整理すれば、名前に引っ張られにくくなります。
チェックリスト
- 許可は、一般的な禁止を解除して本来の自由を回復させる行為
- 特許は、新たな権利や法的地位を与える行為
- 認可は、私人間の法律行為の効力を完成させる行為
- 自動車の運転免許・医師の免許は、名前に反して許可
- 農地の権利移転の許可は、名前に反して認可
- 農地転用の許可、帰化の許可、公営法人の設立認可は、特許的な性質を持つ
- 発明の特許は、講学上は準法律行為的行政行為の確認
次回は、行政行為の効力を扱います。
公定力、不可争力、不可変更力、執行力といった、行政行為らしい概念に入っていきます。